民主主義と“子どもの貧困”(平成29年)
民主主義と“子どもの貧困”
1.子どもは弱者
12、3歳までの子どもは、生活力がなく、自立する力がまだ不十分で、ひ弱で貧しいのは当たり前なのだが、この頃、子どもの貧困か取り沙汰され、社会問題になっている。それは、家族や社会の在り方に問題がある。
新聞報道によると、平成27年の子どもの貧困率は19.3%で、その50%以上がひとり親世帯であるそうだ。
一般的家庭には、父親と母親がいるのだが、今では離婚やシングルマザー、その他の理由で、ひとり親世帯が多くなり、その貧困率が平成27年では58%で、子どもを守りきれなくなっている。
守られる立場の子どもの貧困の主な原因は、ひとり親世帯が多くなったことによるのだが、民主主義の浸透と文明化と共に多くなっている。
2.アメリカ的民主主義
民主主義とは、自由、平等、権利を基本的人権とする、多数決原理や法治主義によるもので、個人の自由と権利が守られており、利己的な人が多くなる。
戦後日本のアメリカ的民主主義は、主体性、積極性、個性などを尊び、自己主張を重視してきた。
イギリス王国の植民地であったアメリカは、240年ほど前に独立戦争を始め、1776年に建国した、移民による多民族国家。
独立を果たした革命国家アメリカの建国精神は、自由主義、民主主義、立憲主義などによる、個人の自由、平等、権利の保障であった。移民によって多種多様な人が集う革新的な多民族国家アメリカは、利己的な不信社会で、格差が大きい。
しかし、国民としての個人の自由や権利がどんどん拡大すれば、民主主義は自然に行きづまる。戦後のアメリカ的民主主義が70年も続いた日本は、利己的な人が多くなり、格差が生じて社会的内部衰退を起し始めている。
3.離婚率の高い原因
平成29年6月中旬のNHK深夜番組「夫婦が非常事態」によると、85%の妻が夫にストレスを感じてキレることが多く、平成28年は21万7000組も離婚したそうだ。
今日の女性は、男性と同じように競争社会である会社などのような、外で働くことによって、テストストロンと呼ばれる男性ホルモンが多くなり、オキシトシンと呼ばれる愛情ホルモンか少なく、男女が逆転しがちになって、男性の満足感が弱くなっている。
古代から女性も男性と同じように、例えば農業従事者のように外で働いてはいたか、自然を相手とするので、今日のように競争心や栄誉心が煽られることは少なく、テストストロンが多くなることはなかった。
戦後の民主教育を受けた、男女平等で利己的になった日本人は、思いやりや忖度する心が弱くなって、自己主張が強くなっている。ましてや母子愛のようなオキシトシンの分泌が弱くなり、女性が男性化した夫婦は、お互いにストレスを感じ、不満が高じて、アメリカやフランス以上に離婚率が高くなっている。
4.ひとり親では不十分
民族とは、言葉、風習、道徳心、生活力などの生活文化を共有する人たちの集団である。その民族社会が安定・継続するには、男と女の結合、結婚が必要である。男女の結婚は、社会が安定・継続するには大変重要な儀式であり、個々の性愛、快楽だけではなく、作為的な繁殖戦略であり、社会の基盤である。また、家族を形成し、信頼心を培い、絆を深め、道徳心を篤くしてより安全に、安心に生活するためでもある。
今日の日本では、女性が家庭を維持・管理する労働力は認められず、どんな職場でも30%以上は女性が占めなければいけないなどと叫ばれている。
女性を労働戦士にするために、満1歳から入園できる、認可保育所を増やそうとしているが、3歳未満の子どもが保育所で育つと、どのような社会的人間になるのかなどについては、あまり考慮されていない。今日の日本は、すでに社会意識が弱く未婚化、中性化、少子化の傾向が強く、しかも離婚率が世界一になっている。
民主主義は、社会の安全よりも個人の自由や人権を重視するので、利己的・快楽的で勝手に生きる人が多く、離婚率が高くなる。
ひとり親世帯が多くなれば、精神的、物質的、社会的にはどうしても満たされない子が多くなり、自然と子どもの貧困率も高くなる。しかし、この社会現象は、子どもの貧困というよりも親の貧困なのである。
機関誌「野外文化」第224号(平成29年10月20日)より